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構造言語学にもとづく教授法

「文法翻訳法」(16世紀~18世紀)も「直接法」(19世紀~20世紀)もおもにヨーロッパを中心に提唱されたものだが、ここでは20世紀半ばに米国で開発された「構造言語学」に基づく教授法を紹介する。

<構造言語学とは?>
 structural linguistics.
 言語の体系を[音素⇒形態素⇒語⇒句⇒節⇒文]という組織的構造ととらえる。
 例えば日本語の「赤(aka)」と「秋(aki)」は異なる構造で、/a/と/i/が音素として対立していると考える。

<構造言語学にもとづく教授法>
構造言語学にもとづく教授法には、下記のものがある。
私個人としては、外国語教授法の中で「ASTP」がもっとも効果的な方法であると思う。
しかし「ASTP」の条件はなかなか整わないので、手話を教える場合でも、日本語を教える場合でも「オーディオリンガル・メソッド」を取り入れながら、学習者の能力やニーズに合わせて指導するよう心がけている。
1)ASTP

  • Army Specialized Training Program. 陸軍特別訓練プログラム。

    別名:アーミーメソッド(Army Method)。
    背景:第二次世界大戦中、アメリカでは情報収集や通訳活動を行うために外国語要員を短期間で養成しなければならなかった。そのために開発されたプログラムで、1943年4月から12月までの9ヶ月間で、日本語を含め28ヶ国語の集中コースが組まれ、学習者は延べ1万5千人にのぼった。教育効果もめざましく、日本語コースの習得者の中からは、ドナルド・キーンや、サイデンステッカーという、著名な日本研究者を輩出した。
ASTPの特徴:
  • ①短期間(90日程度)の集中講義
  • ②少人数(10名程度)のクラス
  • ③文学作品の講読ではなく、実用的な構文の口頭練習
  • ④教師の分業
  • ⑤徹底した口頭練習
2種類の教師:
  • ①上級講師(senior instructor)
  • 学習者と同じアメリカ人の言語学者。目標言語の音声や文法構造などについて英語で講義を行った。学習者の母語で行うため、十分に理解できる。

  • ②ドリル・マスター(drill master)
  • 目標言語の母語話者が行い(日本語コースなら日本人教師)、上級講師が講義した言語項目について、徹底的な口頭練習を行った。
  • この口頭練習は、模倣(mimicry)と記憶(memorization)が主であるため、「ミム・メム練習(mim-mem-method)」と呼ばれる。
  • 毎日の授業:上級講師による文法講義⇒ドリル・マスターによる口頭練習という流れで行った。
  • 私見:教師の言っていることがわからないまま、ただ教師のマネを繰り返す授業とは違って学習者と同じアメリカ人の教師が、学習者の母語で文法や音声の説明を行うため、十分に理解でき、納得がいくまで質問ができるので不安やイライラを感じることもない。
        文法や音声について理解したうえで、ネイティブの教師から口頭練習を受けることで、より自然な言葉を身に付けることができ、私としては理想的な教授法だと思う。
2)オーディオリンガル・メソッド
  • audiolingual method (AL法)
  • 別名:ミシガン・メソッド(Michigan Method)。フリーズ・メソッド(Fries Method)。
  •   オーラル・アプローチ(Oral Approach)
  • 構造言語学だけではなく、行動主義心理学にも理論的な裏づけをおいている。
  • 「教師からの指示(外界からの刺激)に対して、即座に答えられる(自然に反応できる)ようになるまで、練習を繰り返して行うこと(習慣を形成すること)が大切だ」という主張。
  • 「パターン・プラクティス(pattern practice)」という口頭練習を行う。