手話通訳士とは?
手話通訳をしている人たちの中で、厚生労働大臣公認の「手話通訳技能認定試験」に合格した人のみが「手話通訳士」を称することができる「名称独占」の公的資格制度です。
平成元年にスタートしました。
手話を始めた頃は、手話通訳士さんというのは、雲の上の存在でした。
まさか初めて受けて合格するなんて、夢にも思っていませんでした。神様に感謝です!
手話通訳士に合格した時、聴者(聞える人のことです)の方たちからは「おめでとう!」と言われ、ろう者(聞えない人のことです)の方たちからは「手話通訳士に合格したことがゴールじゃない!これからがスタートだ!」と言われました。
その時は、ただただ合格したのが嬉しくて、その言葉の意味があまりわからなかったけれど、今はよくわかります。
手話通訳士の仕事は、一生勉強が大切だと実感しています。今日より明日、明日よりあさっての方が良い通訳ができるように、日々進化していきたいものです
(^-^)
【手話通訳士としての心構え】(私見)
1)英語・フランス語など他の言語通訳と同様に、言語のプロとしての自覚をもつこと。
手話通訳の世界は、「手話奉仕員」という制度もあり、きちんとした職業というより、ボランティア的色彩が強かったと思います。でも2006年12月に国連総会において「障害者権利条約」が採択され、手話は言語であると認められました。
ということは、英語やフランス語などの通訳と同じ立場だと思います。通訳というのは、異なる言語を用いる人たちの間に立って、意思の疎通を図る仕事です。通訳する二つの言語について、きちんとした知識および技術をもっていないと、双方に多大なる迷惑をかけるだけでなく、通訳をする対象者の権利を守れなくなることもあります。
2)聴覚障がいは、「情報障がい」および「コミュニケーション障がい」であることを認識すること。
障がいには様々な種類があります。肢体不自由・視覚障がい・内部障がいなど、それぞれの立場ごとに様々なご苦労があると思います。しかし、聴覚障がいは、他の障がいとは決定的な違いがあります。車いすの方でも、目が見えない方でも、まわりの方とのコミュニケーションがとれます。私の母は車いすですが、私と全く問題なくコミュニケーションをとることができます。
しかし聴覚障がい者の場合、特に生まれつき、または3~4歳の言語獲得期以前に失聴したろう者の場合、まわりの方が手話がわからないと十分なコミュニケーションをとることができません。
また、私たち聴者は、知らず知らずのうちに耳からたくさんの情報を得ています。職場で、仕事をしながら他の人の会話が耳に入り、「今度、人事部の○○さんと総務部の○○さんが結婚するのか」など、自分に対して言われたことではなくても色々な情報を得ることができます。
でも、聴覚障がい者はそのような耳からの情報が入らないので、情報が不足しているということを理解する必要があります。
3)守秘義務
これは講習会でも言われていると思いますが、手話通訳をしていると通訳をする対象者のいろいろな個人情報を知ることになります。家族関係・健康状態・場合によっては経済状況も知ってしまいます。でも、それについて口外してはなりません。
「手話通訳士倫理綱領」の第4条にも書いてあります。
4)相手に伝えたい、という気持ちを持つこと。
以前手話サークルの総会で、手話通訳を目指して勉強中の方が2名発表しました。
1人は登録試験を間近に控えた通訳コースの生徒さん。もう1人は、まだ手話講習会の中級の生徒さん。
手話の技術からすれば、当然通訳コースの生徒さんの方がレベルは上です。でも、中級コースの生徒さんの方が心に伝わる手話をされていて、その差があまりにはっきりしていて驚きました。
中級コースの生徒さんは技術はまだまだでしたが、その場にいるろう者に「何とかして伝えたい!」という気持ちがあることがハッキリとわかりました。私の1)の内容と矛盾してしまいますが、知識や技術は当然大切ですが、それがすべてではないと思います。「本当に相手に分かってほしい」「相手に伝えたい」そういう気持ちがとても大切だと実感しました。
5)自分が伝えて満足するのではなく、本当に相手に伝わっているのかを常に考えること。
地域の登録手話通訳者になったばかりのころは、ともかく耳から入ってくる日本語をもらさず表出することに必死でした。
でも、自分が伝えたつもりでいても、相手に伝わっていなければ意味がありません。「この表現で伝わるだろうか」「こういうやり方はどうだろう」常に自問自答し、工夫を重ねることが大切だと思っています。答えは一つではないし、いくらでも工夫の余地があるということが、大変でもあり、手話通訳の面白さでもあると思っています。
以上、手話通訳士の心構えについて、自分なりの考えを書かせて頂きました。手話通訳士の先輩方を差し置いて、私がこのようなことを書くのは、気がひけます。でもHPにお問い合わせがあったことをきっかけに、書いてみることにしました。手話通訳士を目指す方、手話学習中の方の参考になれば嬉しいです(^-^)
頸肩腕症候群とは
「頸肩腕症候群」・・・「ケイケンワンショウコウグン」と読みます。
「何じゃ、コレ?」と思う方も多いのではないでしょうか?
「手話講習会で習った!」という方もいらっしゃるかもしれませんね。
◆「頸肩腕症候群」というのは、手話通訳者の職業病です。
腕や肩、頸部の筋肉などに負担が集中すること、および手話通訳は同時通訳なので、高度の集中力と緊張状態を保ち続けなければならず、きわめて高度な頭脳の働きが要求されます。
それらの原因により、手指や肩、頸部の筋肉や関節、腱等に痛みを生じ筋力が低下します。
それだけではなく、全身の倦怠感や不眠、イライラなどの精神症状も伴います。
◆私は経験が無いのですが、私が教えて頂いたベテランの手話通訳士の先生は「頸肩腕症候群」の御経験があるそうです。精神的に、うつ状態になったとおっしゃっていました。
◆防ぐためには、まずオーバーワークを避けること。長時間の通訳は、複数の通訳者が交代して行なうこと。
一人の通訳者が連続して手話通訳を行なう時間は、
a)講演会など ・・・20分
b)テレビの手話挿入・・・15分
と言われています。
ただ、実際はその通りにいかないこともあります。派遣元からの仕事の場合は、キチンと複数の手話通訳をつけてくださいます。
でも個人的に依頼を受けたときは、ほとんど1日中一人でやることもあります。
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