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「心中」は手話で…?(手話通訳経験談9)

私は大学で、聴覚障がいの学生さんの出席する講義の手話通訳を担当させて頂いています。
聞こえる学生の中で、一生懸命勉強している姿は、本当に心から応援したくなります。
大学の講義は難しい内容ばかりですが、自分自身も講義に参加できるわけですから、本当に良い勉強になり感謝です。

大学時代は授業を受けて「良い勉強をさせて頂いて、感謝だな」なんて思ったことはありませんでした(大学の先生たち、ゴメンナサイ!)
私は「文学部英米文学科」に通っていたのですが、体育会応援団バトン部に入り、クラブ活動に青春を捧げていましたので、父からはよく「たこは『文学部英米文学科』じゃなくて『応援学部バトン学科』だな」と言われていました(^^;)

さて少し前のこと、高齢者福祉の講義の手話通訳をしました。先生のお話の中で「老老介護」の話がありました。「老夫婦二人暮らしの世帯で、おばあさんがおじいさんの介護をしていた。負担が重くて続けられなくなり、福祉事務所に相談に行ったが、望むような回答をもらえなかった。このような場合、最悪の事態として『心中』も起こりうる」
本当に深刻なお話です。「可哀想に・・・」と思いながら通訳をしている時、ふと「アレ?『心中』の手話ってどうするんだっけ???」と困ってしまいました。

話の内容からすると、まず「おばあさんがおじいさんを殺す」のだろうから、左右の親指と小指を立てて並べて、「小指(おばあさん)」のほうから「親指(おじいさん)」を殺す手話をして・・・そのあとどうしたらよいかわからなくなっちゃったんです(><)
「えーと、『心中』なんだからおばあさんも死ななきゃいけないのに、おばあさんが残っちゃった・・・そうだ!
ホントはここで、「おばあさんが自殺する」手話をすればよかったのに思いつかなかった私は、なんと「死んだはずのおじいさんをよみがえらせ(倒した親指をもう一回起こし)、今度はその親指のほうから小指(おばあさん)を殺す」手話をしたんです。

講義が終わってから、どうもスッキリしなくて、私の手話の先生(ろう者)に聞いてみると・・・
「一度死んだおじいさんが、もう一度起き上がっておばあさんを殺すなんて、『ゾンビ』か!」と言われました(;_;)

左右の親指と小指を並べて、同時に前に倒す「心中」という手話があるんですって!

わたしはホントにまだまだ勉強が足りませんね(><)

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